季節が幾度となく巡る。何も変わっていないようでも、
少しずつ何かが変わりながらまた季節は過ぎていく。


「ユウナ様、今日は有難うございました。ユウナ様とお
話できただけで、少し気持ちが軽くなりました」
年老いた老婆は曲がった腰を更に曲げ頭を垂れた。
「そんな、私は何も…、何もお力になれずにご免なさい」
小さくなってユウナが今度は頭を下げる番だった。そん
なユウナに老婆は驚き、小さな瞳を大きくさせた。
「ユウナ様が謝ることなど何一つとしてありませぬ。どう
か、頭を上げて下され」
おもむろにに上げたその表情は酷く辛そうだ。

「ユウナ様らしくありませぬぞ。こんな年寄りごときで沈
んでいては」
「私らしい私っていったいどういうことでしょうか?」
思いもよらぬ言葉が返ってきて、老婆は暫く黙るしか術が
なかった。

「やだ、私ったら何を…」
沈黙の辛さに耐えられず、ユウナが場を取り繕うように明
るく言った。
「今日の私ちょっと変なんです。たがらさっき言ったこと
は聞かなかったことにしてくださいね」
「それじゃ、私はこれで」
そう言い残すとユウナはまるで逃げるようにしてその場から
立ち去ったのだ。
「ユ、ユウナ様?!お待ちください!」
老婆の呼び止めに振り向きもせず、寺院の外へと一気に駆け
出して行くユウナの背中を遠くで見ていたワッカは慌てて後
を追うのであった。

寺院を出でからもユウナは足を止めることはなかった。それ
どころかますます速度が上がっていく。
「おいおい、いったいどこまで行くきだぁ?」
いったん寺院の外に出たワッカは小さくなって行くユウナを
目に独り呟いた。


寺院の前で頭を振っているワッカへ人影が落ちる。
「あんた、何してるのこんなとこで。手が空いてるならちょ
っと手伝って欲しいのよ」
なにやら荷物を両手いっぱいに抱え込んだ長身の女性が、こ
ちらへ歩み寄って来ていた。
「おっ、ルールー、いいとこに来たな」
薄い笑いを浮かべたワッカにルールーは眉根を寄せた。
「たいしたことねぇとは思うんだが、なんかよぉ、ユウナの
様子が少し変なんだよ。さっきもいきなり走って寺院飛び出
しちまうしよぉ…」
「ふ〜ん」

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